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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

夏時間

このところ女性の新人監督が次々にデビューしている韓国映画界にまた新たな才能が加わりました。1990年生まれのユン・ダンビ監督による本作品は、祖父が病のため亡くなったことをきっかけに自分と母不在の家族の在り方を見つめざるを得なくなった少女オクジュの心模様をみずみずしく描いていきます。 でもなぜ舞台を夏に? これが微妙に効果を挙げています。事業に失敗した父親は夏休みに入ったばかりのオクジュと弟ドンジュを連れ祖父がひとり住む実家に身を寄せます。緑が生い茂る野菜畑のある祖父の家はステレオセットが置かれた居間や2階のミシンのある開放的な部屋を心地よい風が吹き抜け、日本の昭和の様なたたずまいで落ち着きます。トウガラシやミニトマトを摘み真っ赤なスイカをほうばることのできる庭は健康的で、気のふさぐことはあっても元気を取り戻そうとする主人公にそっと手を差し伸べてくれそうです。 商売下手で家計を維持するのに懸命の父親、夫と性格が合わず実家に転げ込む叔母、こっそり母に会いに行く弟、自身も父親の商売道具を無断で持ち出し心の不安定なオクジュ。誰一人完全な人はいないのに、それでも愛さずにはいられない家族を監督は優しく見つめていきます。

21/2/23(火)

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