またしても気骨あるドキュメンタリーの登場だ。70年代後半の英国と言えば、パンクミュージックが誕生し、音楽が一気に反骨の“武器”となった時代。本作はその背景にあった、不況による人々の右翼化、暴力と人種差別への加速の中で、アンチの狼煙を上げた“ロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)”ムーブメントを追ったものだ。数人の若者が立ち上げたこの動きは、やがて10万人のデモ行進と、ジャンルを越境したロックフェスの実現を達成する。 クラッシュ、シャム69、スティール・パルスなど、当時の立役者たちも登場。ビラやポスターのデザインに凝ったRARに倣い、コラージュやアニメーションを混ぜたスタイルも楽しい。ヨーロッパでは若い世代の間ですでにバズられている本作、ぜひとも日本の若い世代にも観てほしい。現代の空気とあまりにも似ていることに驚き、そして勇気を与えられるはずだから。

20/4/2(木)