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“燃え”なければ映画ではない!アツい作品をセレクト
相馬 学
フリーライター
ノマドランド
21/3/26(金)
TOHOシネマズ 日比谷
これは21世紀の『路上』と呼んでしまいたい。 夫と死別し、住んでいた町が行政的に消滅したことを機に、家を捨てて車で放浪生活を始めた初老の女性。そこに悲壮な感覚は、まったくない。抱えてきたものにサヨナラする寂しさがあるのは、人生経験を積んできた者の宿命だ。それを踏まえたうえでの、前に進む人生を、本作は浮き彫りに。食事から排泄まで、労働から消費まで、車上生活をさまざまな側面から捉える。年齢的に命の灯の消えるときが遠くないことも理解している。そんなヒロインの人としての強さこそが本作の魅力。 黙々と生きることに集中する彼女の姿は混迷の2021年を生きる現代人にとって、ひとつの指針になるだろう。ビートジェネレーションは老いても死なず、だ。
21/3/20(土)