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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

MINAMATAーミナマター

1975年、水俣病を取材した写真集が出版された。発表したのは、米写真家のユージン・スミス(1918~78年)と、当時の妻だったアイリーン・美緒子・スミス。映画のタイトルは、世界で反響を呼んだこの写真集に由来している。しかし、本作はこの公害病の深刻な被害の実態を現代に伝える体裁では終わっていない。ユージンらその時代に生きた人物に焦点を当てた重厚な人間ドラマになっている。 1971年のニューヨーク。ユージンは先の大戦でサイパンや沖縄などの戦地を取材し、輝かしい足跡を残した高名な写真家だった。が、現状は金に困り、酒に溺れる日々を送っていた。ある日、CM撮影で知り合ったアイリーンから水俣病の取材を依頼される。古巣の雑誌『LIFE』から特集を組む約束を取り付けたユージンはアイリーンとともに熊本県水俣市に移住。企業側と被害者側の対立の中で困難に直面しながらも、あの伝説となった1枚の写真を生み出す。 見所をひとつと問われたら、文句なしにユージンを演じたジョニー・デップと答える。個人の尊厳と深い苦悩を繊細な表情と仕草で表現した演技がすばらしい。そして、坂本龍一のドラマチックな音楽も。物語に陰影を与え、深い感動が観る者の心に迫ってくる。

21/9/22(水)

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