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三鷹市芸術文化センターで、演劇・落語・映画・狂言公演の企画運営に従事しています

森元 隆樹

(公財)三鷹市スポーツと文化財団 副主幹/演劇企画員

フロム・ニューヨーク TOKYO公演 2019 『こまかいのの貸し借り』

2000年2月19日~27日の上演なので、もう20年近い年月が流れていることになる。『猫演劇フェスティバル』。筆者が従事する三鷹市芸術文化センター星のホールで上演したこの公演で、初めてブルー&スカイ(当時はブルースカイ)さんと出会った。開館以来「三鷹だけで観ることができる公演を実現する」「自分が良いと思った劇団とだけご一緒する」「可能なら、2週間のロングランで公演する」このあたりを不文律に企画を立ててきた中で、老舗も若手も関係なく、自分が気に入った劇団に企画書を出し、その幾つかを実現していたが、シティボーイズの公演や、つかこうへいの舞台など、すでに知名度があった方々の公演に並行して、当時、そのアイデアの舞台化が飛び抜けており、抜群に面白かった「拙者ムニエル」の村上大樹さんに三鷹での公演をお願いしたところ、「「猫のホテル」と「猫ニャー」と一緒に『猫演劇フェスティバル』という公演を上演したいのですが」と相談があり、即断でOKをしたのを覚えている。ちなみに「あれ?『猫演劇フェスティバル』はいいけど、「拙者ムニエル」はどうするの?」と尋ねると、「あっ、大丈夫です。その期間だけ「猫拙者ムニエル」になりますんで」と、村上さんから飄々としたお返事が返ってきたのも思い出深い。 その『猫演劇フェスティバル』で「猫ニャー」(後の「演劇弁当猫ニャー」)の主宰であり作・演出としてご一緒したのがブルー&スカイ(当時はブルースカイ)さんであった。 <<<>>> 私たち“フロム・ニューヨーク”は、それが勝手な思いこみにすぎないとはいえ、これまでニューヨークを拠点として、プロデューサーであるスティーブ氏の元で活動してきました。ニューヨーク中心部にあるふりかけの倉庫で日々レッスンを重ね、実に様々なジャンルの舞台に出演してきました。中でも伝説になりそこねた「ギリギリで鳩に勝てない」という作品は、鳩に立ち向かうブルー&スカイ・市川訓睦・中村たかしの3人が、ギリギリで鳩に勝てない実力のなさを世に知らしめそこね、一躍ニューヨークじゅうの話題になりそこねたことで、私たちにとっては待ちに待った後悔の経験となりました。 そんな風にして長らく活動してきたという体裁の“フロム・ニューヨーク”の生みの親であるスティーブ氏が、2014年の12月に突如失踪してしまったことは、私たちにとってショッキングな事件でした、という体裁でした。スティーブ氏が行方をくらました原因はいまだ謎のままですが、彼はどうやら日本へ来ているらしいという情報をたよりに、私たちは活動の場をニューヨークから東京にうつすことになりました、という体裁です。数々の体裁が飛びかう中ではありますが、何としてもスティーブ氏を見つけ出すために、彼が私たちの存在に気づき、再び会える日を願って、いろいろとやっていく感じです。 〔ホームページより〕 <<<>>> 「フロム・ニューヨーク」について語る場合、まず、作家であるブルー&スカイが生み出す文章を面白いと思うかどうかで判断してもらいたいと思いますし、とにかく彼が書く文章に「ちょ、ちょ、ちょ、なにこれ」と胸の内の琴が激しく掻き鳴らされたら、ぜひ劇場に足を運ばれるべきだと思います。または、これらの文章に「この言葉の意味は?」とか「この文章は本当なんですか?」とか求めがちな人生を送っていらっしゃる方で、今現在何も迷いがなければ、とても素敵な人生であることは疑わないほうがいいのですが、もしも「そうでない人生もあるのではないか」と思い始めている方がいれば、仮に損をしても3,000円程度の足の踏み外しで済みますので、人生をちょっと横道に反れてみる導入体験としても、ぜひ観劇をオススメします。全く感覚があわなければ、たったの3,000円で「私の人生の道筋に悔いなし」と思えるのですがら、例えば「お薬」や「お馬さんや自転車やお船」や「全く知らない人と会う」などによる「横道導入体験」よりは、ずっと安全だと思います。ちなみに、上記の文章ですが、その後ホームページ上に、 <<<>>> 失踪したプロデューサーのスティーブ氏を探すために、ニューヨークから東京へ来たという設定にそろそろ飽きてきた"フロム・ニューヨーク"。今回はメンバーの3人(ブルー&スカイ・市川訓睦・中村たかし)が、日本の印象を語ってくれた。 <<<>>> とか、書いてありますので、まだネットで「プロデューサー スティーブ 失踪」とか検索しようとしている人は、そろそろ気付いてもらえたらと思います。というか、そんな人はいないと思いますが。いたら、かなり愛される人生を送っていらっしゃると思います。ご本人がそのポジションに納得していらっしゃらない場合を除いて。 <<<>>> たまにしか公演をやっていないフロム・ニューヨークの、たまにやる新作公演です(1年と10か月ぶりです)。もしも「たまにやる」か「滅多にやらない」か、そのどちらかしか選択肢がないとしたら僕らは迷わず「たまにやる」方を選ぶでしょう。たまにやりたい!!やりたいんだ、俺たちはたまに!!という、情熱に毛が生えたようなものがあふれだして最早誰にも止めることは出来ないからです。毛を抜いてしまえばそれは“情熱”になってしまう恐れもあるので、今こそ、やっと生えそろってきた毛を決して失うことなく、たまにやる公演をやります。よろしくお願いします。(ブルー&スカイ) <<<>>> 先に記した「拙者ムニエル」で、しなやかなまでにクレバーで、それでいて内に秘めた激情を醸し出していた市川訓睦と、「宇宙レコード」で、繊細さを醸し出しながらも、少しも顔色を変えずに人を追い込むことのできる圧のある狂気を表出する中村たかし。そして、作品そのままに、全く掴みどころのない存在感で観客の脳内麻薬を撹拌させるブルー&スカイの3人による「フロム・ニューヨーク」新作公演『こまかいのの貸し借り』。 「何の?何の貸し借り?」という思いなど、心地よくかき消してくれる「フロム・ニューヨーク」なひと時。いかがでしょうか?

19/12/1(日)

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