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渡辺 祥子
映画評論家
ヘルムート・ニュートンと12人の女たち
20/12/11(金)
ル・シネマ
しなやかな肢体の退廃的な美女しか撮らないカメラマン、と思ってきたが、むろんそれだけではないことがイザベラ・ロッセリーニら12人の女性の証言を得て見えてくるドキュメンタリー。うちに秘められたナチス支配下のドイツで育ったユダヤ人の痛み。モデルの一人シルヴィア・ゴベルは、「彼はワイマール共和国のよう」と言う。ナチス出現前の退廃とドイツ表現主義が重なる官能の美が彼の作品にはあるってこと? 背後に聞こえるピアソラの『リベルタンゴ』が退廃を煽る。その一方で、モデル出身で写真家でもある妻ジューンと彼の関係は普通の仲良し夫婦のようで可愛い。さまざまな作品と主張の強い撮影過程を見せつつ、多くの矛盾を抱えた写真家の本質に迫っていく。
20/12/7(月)