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ノージャンル、ノーボーダー。個人的アンテナに引っかかるもの
佐藤 久理子
パリ在住、文化ジャーナリスト
MONOS 猿と呼ばれし者たち
21/10/30(土)
シアター・イメージフォーラム
不穏な題名からして好奇心を煽る。そして美しくも不気味な映像。『蠅の王』と『地獄の黙示録』を足して割ったような本作は、時も場所も特定できない、ある南米の山岳地帯を舞台に、“組織”からの命で、アメリカ人女性の人質と、大切な“預かり物”の乳牛の世話をする少年少女のゲリラ兵たちの物語だ。 組織とは何なのか、人質が何のためにいるのか、そして彼らを攻撃してくる敵もどこのだれなのかわからない。すべてが不透明で、恐怖とカオスだけがじりじりと沸点に近づくさまに吸い込まれる。 その感覚を一層煽るような不協和音は、坂本龍一も絶賛した『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』や、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』を手がけたミカ・レヴィに拠る。 2019年のサンダンス映画祭で披露されて以来、欧米で話題となっていた本作を撮ったアレハンドロ・ランデス監督の名前は、覚えておいて損はない。
21/10/26(火)