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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

ラスト・ムービースター

バート・レイノルズが不敵なタフガイ、マッチョなセックス・シンボルとして輝いていた時代を知っている世代にとっては涙がチョチョ切れる映画である。主人公のヴィックという忘れられたスターは、かつて『ロンゲスト・ヤード』や『脱出』などの傑作で一時代を画し、スーパースターとして君臨していたバート・レイノルズ自身を明らかにモデルにしている。いわばセルフ・パロディの趣向だが、ナッシュビルのマイナーな映画祭から招待されるも、あまりに安手な対応に激怒し、会場を後にするヴィックには、どこかリアル過ぎるまでの悲哀感が漂っている。バート・レイノルズ自身の不遇な晩年そのものが二重映しとなって、見る者をある屈託へと導くからだ。『脱出』『トランザム7000』の断片がたびたびCG処理を介して引用されるが、無邪気なオマージュというよりも、どこかアイロニカルなほろ苦い後味を残すのだ。 ヴィックが幼少期を過ごした故郷の家、認知症になっているかつていちばん愛した女性を施設に訪ねるシーンでは、老境にいたったバート・レイノルズならではの憂愁に満ちた名演が光る。こういう見事な最後の主演作を持ちえたバート・レイノルズは、やはり稀有な幸福な映画俳優だったのではないかと思いたい。

19/9/2(月)

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