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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

風間サチコ展「セメントセメタリー」

現在・過去・近未来をつないで虚実入り混じる物語に仕立て、白と黒の画面で表す。多数刷れる木版画なのに刷るのは1枚のみ。歴史を掘り起こすなかで、権力によって隠蔽された記憶にも触れている。なのにか、だからか、文化庁にも作品が収蔵され、2019年には「Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021」(東京都/トーキョーアーツアンドスペース)なども受賞。デビューした90年代から社会への疑問や怒りを原動力として、それを表現に変換する技術も飛躍し、シャープでソリッドな線が多くなっている。 今回は、黒部ダムのリサーチをもとに『ニーベルンゲンの指環』の物語の一部をミックスした「クロベゴルト」シリーズ(黒部市美術館での個展「コンクリート組曲」で発表)に、秩父の武甲山と佐渡銀山を題材とした新作をプラス。ダムや鉱山を見て、その土木技術に“プロジェクトX”的な感動を覚える人も多いかもしれないが、風間は、人間が神のように自然をコントロールしようとする欲望のほうに違和感を抱く。 風刺画というよりも、ものがどのようにできているか、その成り立ちから紐解くうちに、時間も場所も別々にあったものが繋がっていることに気づくのだろう。コンクリートの原材料であるセメントは、鉱山から切り出された石灰石でできている。石灰石は何でできている? 誰がそれをつくったのか? セメタリー=墓標の意味が会場で解ける。コンクリートでできたビルはあなたの目の前にもある。

20/2/25(火)

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