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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

おもかげ〈2019年〉

息子が失踪した母親の悲しみは『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』でも描かれた。『おもかげ』が独創的なのは、息子の行方や犯人に全く話がいかないことだ。冒頭の事件のシークエンスのあと、10年後、息子が失踪した海辺のレストランで働く母親、エレナが登場する。 エレナは息子と同じ年齢の、息子の面影がある少年ジャンを見かけ、思わず後をつける。そこからその少年との不思議な関係が始まる。39歳のエレナと未成年のジャン。周囲はとまどうが、母なのか女なのか、息子なのか男なのか、2人が揺らいでいく姿が本当に素晴らしい。そこには一人の女性の再生の物語、などという紋切型の言葉では表しきれない恋愛の不可思議さと生の喜びが息づいている。

20/10/19(月)

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