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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

歌舞伎座 二月大歌舞伎

昼の部の『菅原伝授手習鑑』。 頻繁に上演される『寺子屋』をご存じの方も多いだろうが、その前段を見ていないとおそらくこんな疑問を抱くはず。なぜ菅相丞は流罪となったのか、なぜ松王丸は自分の倅を身替りに差し出したのか、武部源蔵の夫婦はなぜ入ってきたばかりの寺子を手にかけたのか、そもそもこの源蔵夫婦は何者でなぜ菅相丞の子息を預かっているのか、松王丸の台詞にあるが桜丸って誰? そしてなぜ死ななくてはならなかったのか……。それらの経緯がよくわかる、『菅原』の前半が通しで上演される。 「加茂堤」。醍醐天皇病気平癒のために帝の弟斎世親王が参詣に。親王の舎人、つまり専属の御所車の運転手である桜丸とその女房八重は、斎世親王とその恋人である菅相丞の養女の苅屋姫を逢引の手伝いをする。菅相丞を敵視する藤原時平の家来は御所車を怪しむが桜丸が二人を逃がす。桜丸は後にこの罪を背負って自害するのだ。松王丸は藤原方の舎人、梅王丸は菅相丞の舎人。三人三様に運命が大きく分かれてしまう。 「筆法伝授」。藤原時平の讒言により菅相丞は大宰府へ流罪されることに。時平公は、斎世親王に娘を添わせ妃にたてようという謀反ありと言うのだ。一方で書の道を後進に伝授せよと勅命を受けた菅相丞。見事な書の腕を持つ弟子の武部源蔵。だが事情あり、菅相丞からは勘当中の身だ。菅相丞はその勘当を解かないまま筆法は伝授し、息子の菅秀才を源蔵夫婦に託すことにする。 「道明寺」。父菅相丞流罪の遠因となった養女の苅屋姫。実の母である覚寿は菅相丞と姫の対面を許すわけにはいかない。菅相丞は姫との名残を惜しみ、梅王丸を伴に、大宰府へと向かう。 今回、菅相丞を当たり役とした十三世片岡仁左衛門の二十七回忌の追善狂言だ。気品があり、誰もがかしづきたくなるオーラに満ちていた。羽田澄子監督の記録映画『歌舞伎役者十三代片岡仁左衛門』にも詳しい。晩年はほとんど視力を失ったが、それでも観るたびに崇高さが増し、人が神になる瞬間とはこういうものかと思った記憶がある。そして今、十五代目の仁左衛門の、随一の菅相丞を見ることのできる幸せ!

20/1/30(木)

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