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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

キューブリックに魅せられた男

スタンリー・キューブリックの逝去から、もう20年経った。この映画は、完全主義者と言われた彼の背後でどんな人間が働いて(働かされて!)いたのか、それを痛いほど教えてくれるドキュメンタリーだ。 もとは『バリー・リンドン』に抜擢された俳優のレオン・ヴィターリは、次作『シャイニング』以降、監督アシスタントとして膨大な仕事を与えられる。監督にひたすらメモを取らされ、一日14時間以上を監督の屋敷でフィルムに囲まれて働いたこの男は、俳優のセリフ指導からキャスティング、宣伝印刷物のレイアウト、予告編の翻訳まで何でもやった。無数の上映プリントチェックも経験し、いつしか音声素材やネガフィルムの扱い方も覚えてしまう。キューブリック映画への愛に貫かれ、レオンは苛酷な教育に耐え続けた。 監督が亡くなっても、男の生き甲斐は失われるどころか、そこからが彼の新しい出番だったというのが面白い。自分が関わる以前の旧作のプリントにも親しんでいたレオンは、いつしか理想のリマスター監修者になっていたのだ。映画の復元を担当するために俳優になったはずはないのに、インタビューで彼は今なお幸福に浸っているように見える。キューブリックは、レオンを通じて自分の死後を準備していたのではないか。全く恐ろしい話である。

19/10/29(火)

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