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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

アイダよ、何処へ?

親子の別れを見るというのは心が張り裂けそうな思いになるが、その間を裂く人間もまた誰かの息子であり、誰かの親である。それがとても恐ろしいことで、人間の愚かさなのだと気付かされる。戦争という人を狂わせる状況は、ある種の興奮状態を及ぼし、人間の一番おぞましい部分を引きずり出す作用がある。 思い起こせばアカデミー賞外国語映画賞の『ノー・マンズ・ランド』など、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争は度々、映画として世界にも知られてきたが、その際に起きた集団虐殺に至るまでの奮闘をこの映画では通訳として、そして母親の立場で体験することになる。 これが実話というのも悲しいかな納得してしまうし、アイダという女性の行動は、多分、多くの親たちが共感する行動なのだ。 自分は、たまたま国連保護軍の通訳だったからセーフティ ゾーンに居られるものの、夫や息子たちは危険エリアから出られない。さらには上層部の通訳をしているから最新情報を入手してしまい、恐怖に苛まれる。 劇中、ひとりの妊婦が破水するシーンが登場するが、それはきっと“最悪の状況でも命は生まれる”という生命の神秘と生命力の象徴なのかもしれない。後半、子供たちの無邪気な笑顔が映し出されるが、この子たちはもちろん、世界の子供たちの笑顔が消えない未来を強く願ってしまう。

21/8/30(月)

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