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植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

生誕100年記念 映画監督 野村芳太郎

『張込み』(7/6〜7/12) 神保町シアター 特集「生誕100年記念映画監督野村芳太郎」(7/6〜8/9)で上映 幼少期の遊び場が撮影所だったという根っからの映画人・野村芳太郎監督(父親が松竹蒲田撮影所の初代撮影所長で映画監督の野村芳亭)の初期の代表作。 今更言うのもはばかられるが、タイトルが出るまでのプロローグ・シーンが素晴らしい。東京発鹿児島行きのSL「さつま」に横浜駅から乗り込んだふたりの刑事、下岡(宮口精二)と柚木(大木実)が目的地の佐賀駅を出て旅館に到着、「さあ、張込みだ」という下岡のセリフでようやくタイトルが映し出され、スタッフ・キャスが紹介される。その間、11分38秒。今までこんなアバンタイトル、見たことがなかった。 監督野村芳太郎、38歳。脚本の橋本忍、39歳、両者のアシスタントを務めた山田洋次、27歳(クレジットはされていない)の意欲がほとばしり出ている滑り出しだ。松本清張の僅か30枚ほどの短編を基に、犯人の石井(田村高広)と主人公の若い刑事柚木の人生をシンクロさせた構成も、緊密で見事だ。 高峰秀子が家庭ではひたすら貞淑な妻、もと恋人前ではひとりの女に戻る薄幸の女を見事に演じきっている。彼女が自ら恋人の唇を求めにいくキス・シーンは生々しい。

19/7/3(水)

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