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話題作、アート系作品を中心に
恩田 泰子
映画記者(読売新聞)
ワイルドライフ
19/7/5(金)
YEBISU GARDEN CINEMA
個性的な演技派俳優、ポール・ダノの初監督作はちょっと不思議な味わい。1960年代のアメリカを舞台にある家族が崩壊するまでを描いているのに、後味はさわやかなのだ。 14歳の少年と、その両親の物語。明るく豊かな理想の家族になろうとしてきたが、父親の失業を機に様子が変わる。父親は家を出て、母親は思わぬ顔を見せ始める。 まだ人生をやり直せる年齢ではないか。失われゆく若さにしがみついてあがく母親を演じるキャリー・マリガンの姿は見ていて切なくなるほど。だが、同時に何だか爽快になってくる。型に自分をはめるより、本音でじたばたするほうが、ちゃんと生きている感じがしてくるのだ。良識という非常識からときはなたれる解放感を味わえる一本だ。
19/7/1(月)