Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

TOVE/トーベ

テレビ・アニメの『ムーミン』は大好きで、毎週欠かさず観ていた。だが、原作小説は未読で原作者のトーベ・ヤンソンのことはほとんど知らずにきた。おぼろげながら北欧的美少女を想像していたので、トーベの半生を描いた本作『TOVE/トーベ』を観て、腰が抜けるほど驚かされた。彼女は親には反抗する、タバコは吸う、お酒は飲む、既婚者を積極的に誘う、年上の人妻との同性愛に溺れていく……こちらの安直なイメージを打ち砕く、スリルと映画的感興に充ちた素晴らしい女性映画なのだ。 第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキ。激しい戦火の中、画家トーベ・ヤンソンは、『ムーミントロール』の物語を描き始める。それが人気になり、彼女は舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い激しい恋に落ちる。それはトーベ自身の運命の歯車が大きく動き始めた瞬間だった。 文学、コミックス、舞台芸術、アニメーションなど、今日においても色褪せること無く人々を楽しませ続けるムーミンのキャラクターたちは、いかにして生み出されていったのか。本作はトーベ自身の人生と、その創作の秘密に肉薄していく激しい人間ドラマだ。 余談だが、『岡田斗司夫ゼミ♯282』(2019.5)によれば、日本での”ムーミン事情”最大の特徴①は「海外では入手できないすべての原作が手に入る」「グッズショップが多い」、特徴②は「スナフキンの人気が異常に高い」(57%。以下ニョロニョロ12.5%、リトルミイ6.5%)、日本は世界に冠たる”ムーミン王国”とのこと。 『ムーミン』に興味があるなしに関わらず、すべての映画ファンが充分に愉しめる女性芸術家の物語を作り上げた監督は女性のザイダ・バリルート、トーベ役にはフィンランドとスウェーデンで幅広く活躍しているフィンランドの新進気鋭の女優、アルマ・ポウスティが扮している。

21/9/12(日)

アプリで読む