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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

レリック ー遺物ー

「母と娘」という関係は時として、父と息子より、母と息子より、そして父と娘よりも複雑だ。 母と娘の愛憎と業を潜ませ、誰にも訪れる“老い”の恐怖をホラーに落とし込んだ本作。監督を務めたのは、本作が長編デビューとなる日系オーストラリア人監督ナタリー・エリカ・ジェームズ。3世代に渡るリアルな女性像は、女性監督だからこそ描けたように思う。 認知症を描いた映画といえば『ファーザー』が記憶に新しいが、本作はより“老い”にフォーカスが当てられている。思い出したのは、息絶えようとしている松尾芭蕉を前にした弟子たちの心の機微を描いた芥川龍之介の『枯野抄』だ。 魂の容れ物としての肉体は、老いの前にはもはや残滓だ。かつてのその人と今のその人は、長い時を経てもはや別人のようだ。その姿を見て果たして何を思うのか。嫌悪か、哀惜か、はたまた変わらぬ愛なのか。 鑑賞後、私の心には悲しみがひたひたと満ちた。でもそれは恵みの雨の様でもあった。抗えない恐怖の連鎖、それでも愛し愛された記憶は、“救い”になるに違いない。

21/8/9(月)

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