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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

82年生まれ、キム・ジヨン

もともと韓国ではポピュラーな姓である「キム」と、1980年代生まれの女子に多い「ジヨン」というありふれた名前を親からもらった30歳代後半となる女性の物語です。そんな名前をあえてつけたのは、平凡ではあっても良い人生だったと振り返ることができるように頑張ってという親心からだったと思います。でも彼女を待ち受けていたのは……。 入社した時の思いとは裏腹に、結婚・出産を機に退職し、育児と家事に追われるジヨン。常に誰かの母や妻として見られ、生きがいだった仕事も手放し、家に閉じ込められたような感覚に陥ることもある日々。すっかり変わってしまった彼女を夫のデヒョンは心配するのですが、本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めません。街で聞いたら「えっ、まだそんな悩みを? もう2020年代なのに」と笑われるかもしれません。 本作が韓国でヒットしたのは自身も二人の子を持つ母親であるキム・ドヨン監督の繊細な演出が共感を得たからでしょう。学生時代にジヨンが痴漢に遭い、助けに来た父親から「おまえにもスキがある。短いスカートはダメ」と叱られたり、同じ兄弟姉妹なのに弟だけ優遇といったエピソードを積み重ねていくことで、多くの女性が感じてきたであろう生きづらい社会をあぶり出したのです。兵役や大学進学で不正を疑われる事案が跡を絶たない韓国ですが、男女をめぐる伝統的価値観の変化についても無関心ではないようです。

20/10/6(火)

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