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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

夢のアンデス

クーデターに破壊されたサルバドール・アジェンデ政権の最期を263分の圧倒的な映像で描き抜いた『チリの闘い』(完成1979年)は、2016年、日本初の劇場公開でもヒットを記録し、政治映画作家としてのパトリシオ・グスマンを印象づけた。だが現在のグスマンが、変わりゆく祖国チリを亡命者として見つめながら、南北に長く、砂漠、海洋から寒冷地までを擁する国土を駆け回って『光のノスタルジア』(2010年)や『真珠のボタン』(2015年)を送り出した「ドキュメンタリーの詩人」であることも私たちは知っている。 それらに続く3部作の完結篇となる『夢のアンデス』が描くのは、タイトルの通り、山脈だ。映画は、首都サンティアゴの地下鉄駅に描かれた、スペインに亡命した画家によるリアルなアンデス山脈の絵に始まる。そして、本物のアンデスのごつごつした偉容がグスマンの回想を呼び起こすが、やがてカメラは高山の頂からまた都市に移ってゆく。やはりあのクーデターと、その後の民衆の記憶に向かわないではいられないのだ。弾圧の場を撮り続けてきた映像作家パブロ・サレスの、無数のビデオテープの群れに目を奪われる。 この映画は、複数の主題を組み合わせることの難しさにも直面したはずだが、宇宙を見上げ、海中にカメラを投じ、山脈をも超えた3部作の《垂直のポエジー》はここで一旦終わる。だが、80歳のグスマンはすでに新作を撮影中と聞く。この先も期待したい。

21/10/7(木)

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