イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオが撮り上げたこのマフィア映画は、シチリアの犯罪結社コーザ・ノストラを裏切った男、トンマーゾ・ブシェッタの数奇な半生を描く実録ドラマだ。 まず、第二次マフィア戦争と呼ばれた1980年代の抗争を映像化した序盤が凄まじい。路上や教会など所構わず繰り広げられる仁義なき暗殺シーンを、切れ味鋭い編集で映像化。続出する死者があれよあれよという間に100人超えしていく様を、数字のテロップでカウントしていく演出にも呆気にとられる。それ以上に強烈なのは、司法当局に一斉逮捕された大勢のマフィア幹部たちが巨大法廷の檻の中に押し込められた“パレルモ大裁判”のシーンだ。 これが実話と聞いても、にわかには信じがたい驚愕の光景が続出する叙事詩的大作。そして裏切り者の複雑な内面にも迫り、逃れられない痛切な宿命を浮き彫りにしていくベロッキオ監督、80歳を超えてもなお衰え知らずの剛腕ぶりに唸るほかはない。

20/8/27(木)