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堀 晃和
ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。
1917 命をかけた伝令
20/2/14(金)
TOHOシネマズ 日比谷
映画表現の可能性について深く考えさせられた作品だった。第一次世界大戦の1917年、フランスの西部戦線。イギリス軍兵士2人が、ドイツ軍の罠を回避するため、攻撃中止命令を前線の友軍に伝えに行くという内容だ。 このシンプルな物語を描くためにサム・メンデス監督が取った手法が全編ワンカットによる撮影。厳密にはそう見えるように撮影しているのだが、観客はまるで主人公の伝令に付き添っているような未体験の臨場感を味わえる。編集は、別々のシーンをつなぐことで、物語を数時間内にまとめる映画の魔法だが、メンデス監督はカットを割らずとも重層的な描写ができることを証明してみせた。 ワンカット撮影は、古くはヒッチコック監督が1948年の『ロープ』で挑戦している。フィルム1巻は10分間。完全ではないが、レンズを背中に近づけて暗くするなどフィルムのつなぎ目を分からなくするやり方で、物語と上映の時間をほぼ一致させている。 『1917』のスタッフは監督をはじめ、アカデミー賞受賞経験者がそろう。特に名手ロジャー・ディーキンスの名前を記憶してもらいたい。現代最高の撮影監督といっていい。薄曇りのやわらかな自然光をとらえた映像が美しい。
20/2/11(火)