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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

フォーリング 50年間の想い出

認知症の人が出てくる映画と聞けば「わざわざお金を出してまで見ることもないか」などと敬遠される方もいらっしゃるかもしれません。確かに本作も子供時代から保守的な父との間に心の溝を抱えていた主人公が、過去と現在の出来事が混濁する認知症の父と向き合うお話。病状が落ち着いているときはまだしも、環境が変ったりすると空港に迎えに来た息子を置き去りにして勝手に息子の家に直行したり、ところ構わず卑猥な言葉を交えての差別発言を連発するなど手に負えません。我慢に我慢を重ね父に尽くしてきた息子も親父から強烈な1発を噛まされた時は本気で殴りあったりしてしまいます。本当に暗いです。でも前夜の格闘など忘れたかのように「コーヒーを入れようか」と息子が普通に声をかけたり、あるいは父がいつも同じ場所に座って書きものをすることに気づき「ここにいたいんだね」と尋ねるなどどこの家でも交わされているような静かなシーンが最後に出てくると、認知症のイメージもガラッと変わります。もちろん認知症の人を世話する人の負担は大きいでしょうが、日常生活の中に認知症が溶け込んでいると考えれば、また見方も変わるかもしれません。少々辛くても最後まで見続けていただきたい作品です。 『グリーンブック』のビゴ・モーテンセンが監督デビューを果たし、息子役で出演している半自伝的ドラマです。

21/11/12(金)

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