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水先案内人のおすすめ

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洋画・邦画問わずグッときたヒロインを中心に

細谷 美香

映画ライター

82年生まれ、キム・ジヨン

心のバランスを崩してしまった女性、キム・ジヨンのカルテ形式だった韓国のベストセラー小説を、現在を軸に過去のシーンを交えて映画化。日本よりも家父長制が強いと言われる韓国ならでのエピソードもありますが、性差による女性の生きづらさを描き出すシーンの数々は“あるある”の連続です。 しつこくつきまとわれるのも自分の服装や態度のせい、トイレに入れば盗撮の危険があり、職場では男性が優先され、結婚、出産でキャリアを中断せざるを得ない。束の間のお茶の時間を過ごすだけで、いい身分だと思われる……etc。忙しなく家事、育児をしているジヨンが虚ろな目をしてベランダに佇むシーンのリアルさや、もっと激しい男女の格差を経験しているジヨンの母の叫びにも、胸がぎゅっと押しつぶされそうになりました。 映画では夫にも光が当てられていますが、この夫が決してひどい人ではないところがこの映画の肝。思いやりのある夫が「君のために育休をとるよ」というシーンから、性差に対して無意識であることが伝わってきて絶望的な気持ちになりました。ある角度から見ればジヨンは恵まれているかもしれず、おそらくそれを自覚しているからこそ彼女は声を上げることができなかった。それでも原作にはないラストから感じられるのは、ほんのわずかな希望の光。恋人同士や夫婦で一緒に観ることは、社会が変わる一歩になるかもしれません。

20/10/21(水)

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