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ノージャンル、ノーボーダー。個人的アンテナに引っかかるもの
佐藤 久理子
パリ在住、文化ジャーナリスト
ハウス・ジャック・ビルト
19/6/14(金)
新宿バルト9
1作ごとに予想を超える問題作を突きつけるラース・フォン・トリアー監督が、殺人鬼を描き、またもや世界を茫然自失に追いやった。これはアートか、なにがしかのメッセージを持った過激なエンタメか、それとも究極の退廃的自己セラピーなのか。 殺人鬼役に「演技派リアリスト」マット・ディロンを配し、冒頭ユマ・サーマンを傲慢女役で登場させてさっさと天罰を下し、それ以後もありとあらゆる手段で生きとし生けるものを葬り去る。しかしこの殺人鬼は一部の隙もない知性派などではなく(レクター博士ではない)、破綻し、どこか嘲笑すら誘う存在。フォン・トリアー流のユーモアはここでも健在で、我々は瞠目と笑いと居たたまれなさの果てに人間の持つ闇を直視させられる。 日本は完全ノーカット版上映とあればなおさら、観ないわけにはいくまい。
19/6/10(月)