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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

藁にもすがる獣たち

この作品はタイトルからも想像できるように犯罪映画のジャンルに入ることは間違いありません。しかも冒頭の場面は大写しにされた高級バッグが今まさにロッカーに押し込められようとする訳ありのシーン。入っているのは現ナマ?それとも……と、どうしても怖いことを想像してしまいます。続く場面で先程のロッカーの場所はホテルのサウナだったことが分かります。夜勤明けの店員が現金10億ウォン入りのバッグを見つけるのですが、テレビでは湖で切断死体が見つかり、続けて路地から飛び出した男が清掃車にひかれ、さらに投資詐欺事件の犯人逮捕のニュースが流れます。一見して無関係に見える事件、事故はどこかでつながっているのでしょうか。否応なく緊迫感が高まります。 さて、映画は金に目が眩んだ男や女が次々と凶暴になり、その反動故か絶望にまで追い込まれていく様を追いますが、暴力とドタバタの間を行き来する二転三転の展開はスリリングでまったく先が読めません。色男が似合うチョン・ウソンが珍しく間抜けで情けない男を熱演し、チョン・ドヨンの悪女ぶりと好対照をなすのも見逃せませんが、『チャンシルさんには福が多いね』のユン・ヨジョンが、今作では認知症の高齢者をチャーミングに演じて健在ぶりを示すなど、脇役も含めそれぞれがいい味を出しています。 キム・ヨンフン監督が長編デビュー作とは思えない緻密な脚本と演出で観客を飽きさせません。

21/2/16(火)

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