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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

【京都公演中止】スーパー歌舞伎II『新版オグリ』

「小栗判官もの」といえば、たとえば「忠臣蔵」のように、歌舞伎の多くの演目群の一角をなしている。 市川猿翁(当時・三代目猿之助)が梅原猛と共に創ったスーパー歌舞伎『オグリ』は、まさに当時の猿之助自身が投影されたドラマだったと思える。オグリのたぐいまれなる資質が開花していくビルドウングスロマン、そして照手姫とのロマンス。二人で天高く飛んでいくいくのがその象徴だった。 当代の市川猿之助はこの小栗判官ものに、群像劇としてのさらなる可能性を見出したようだ。オグリを初め、遊行上人や、オグリの仲間たち、照手姫や地獄の閻魔大王ですら、”生きている”ことの辛さにぶつかり、人生を謳歌するためにもがきつづける姿を見せる。宙乗りをするのはオグリと照手姫ではなく、だからオグリと遊行上人なのだ。 歌舞伎と言えばスターシステム。だが群像劇としての楽しさがしっかり加われば、観る側にとって親しみやすく、今という時代にもなじみやすく、それぞれの役者のファンをも獲得しやすい。ワンピースもそうだったように「推しメン」を見つけやすく、「箱推し」もしやすい。芯となる一人の役者を中心に、一人一人の圧倒的な芸の力を味わえるのは歌舞伎のもともとの魅力。さらにそこにアンサンブル性を強化した作品が生まれれば、これはもう鬼に金棒だ。 今回の『新版 オグリ』はオグリと遊行上人を市川猿之助と中村隼人が交互に演じる。猿之助と隼人の両花道の馬の宙乗りや、「ワンピース以上の水浸し」というほどの本水を使った大立廻りもあるとか。「今」という時代を切り取るオグリの物語となりそうだ。

19/9/28(土)

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