アメコミ原作のものを観ない人、『バットマン』シリーズを観ていない人にこそ、観て欲しい。 冒頭から陰鬱だし、観ている間も楽しくないし、悲惨なシーン、目を背けたくなる描写もあるし、後味も悪い。不快指数満点だが、名作としての風格を持つ。 生まれながらの悪人はいない。ひとはなんらかのきっかけでダークサイドに落ちてしまう――『スター・ウォーズ』はアナキン・スカイウォーカーがいかにしてダース・ベイダーになったかの物語だったが、この映画も売れないコメディアンがいかにして悪の化身ジョーカーになるかの物語で、説得力がありすぎる。 人生なんてトランプと同じで、ジョーカーを持ち続ける人が負ける。お人好しで他人に押し付けられない者が、ジョーカーになる。 アメリカの抱える、つまりは、いまの世界が抱える闇が体感できる、恐ろしい映画だ。

19/9/30(月)