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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション

吉野石膏所蔵の作品には、印象派から20世紀前半に焦点を当てた企画展で何点かお目にかかってきた。その度ごとに作品の質の高さが印象深く、コレクションが寄託されている山形美術館を訪れたいと思いながらも、長年機会を逸してきてしまった。それだけに、コローからシャガールまで選び抜かれた72点を東京で鑑賞できるのは嬉しい。 まずは穏やかな色調が眼に沁みるコローの風景画やミレーの農民画。そしてクールベから印象派の画家たちへ。ルノワールやモネ、ピサロ、シスレーも魅力的なのだが、今回はルノワールの《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》、ドガの《踊り子たち、ピンクと緑》、カサットの《マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像》の並びがとても興味深かった。色彩の融合が快いルノワール、繊細ながら素早い手の動きを感じさせるドガ、緻密な描写と大胆な筆致が際立つカサット。いずれもパステル画だが、三者三様の違いが楽しい。     ところでドガ作品は以前に国立西洋美術館の『北斎とジャポニスム』展(2017年)にも出品されていた。その時には北斎の力士と踊り子のポーズの類似を強調する展示だったせいか、チュチュのピンクから緑のグラデーションの美しさや、緑色のボディスの光沢とスカートの透け感の対比など、細部に眼を留めていなかったことに気付く。展示の仕方で見え方も変わるものだと実感(いや、私の目が節穴なのかもしれないが…)。パステル画といえば、ピカソにしては珍しいコロコロした造形の風景画にも出会えたりして、小品が多いものの、珠玉の作品群の味わいは格別なのだ。

19/12/27(金)

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