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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

スパイの妻〈劇場版〉

クライマックスで、主演の蒼井優が叫ぶ。何と言うかは、映画を観て確認していただくとして、そのセリフを思わず口に出してしまうほど、素晴らしい作品だ。長回し撮影や引き画を効果的に使った演出、よく練られた脚本、光と影を強く意識したきらびやかで冷たい怖さを伴った映像、そして出演者の巧みな演技。9月に開催されたヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)の理由がうなずける。日本映画の第一人者として、四半世紀近く世界で注目されてきた黒沢清監督の集大成といっていい。文句なしに面白い。 戦争前夜の1940年、神戸で貿易会社を営む福原優作(高橋一生)は、同社で働く甥とともに渡航した満州で恐ろしい国家機密を目の当たりにする。帰国した勇作は、妻(蒼井)に内緒で己の正義を貫く行動を起こす。しかし、あることで憲兵隊からスパイと疑われてしまい……。 夫に絶対的な信頼を寄せる聡子が疑いの目を向け始め、再び深い愛情を通わせる。歴史の暗部を描いたサスペンスの構成だが、夫婦愛を中心にとらえた極上のラブロマンスでもある。 見所を一つ挙げろと言われれば、中盤の5分近い長回しのシーンを推す。蒼井と高橋という名優2人の魅力が際立つ名シーンだ。

20/10/16(金)

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