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中川 右介
1960年生まれ、作家、編集者
クーリエ:最高機密の運び屋
21/9/23(木)
TOHOシネマズ 日比谷
この夏はナチスのホロコーストを題材にした映画を何本も観たが、ナチスが滅んだ後に世界が待っていたのは、ソ連という共産党が支配するもうひとつの独裁国家だった、というのがこの映画。間接的にソ連の恐ろしさを描いた映画でもある。 だが、何よりもカンバーバッチ主演映画だ。今作では普通のビジネスマンを演じており、前半は、別にカンバーバッチでなくてもできそうなのだが、後半はカンバーバッチにしかできない境地に達している。観ていて、室温が10度くらい下がった気がした。 1960年代のソ連とイギリスが舞台。キューバ危機前後の、米英ソの諜報合戦を背景にした物語。ジェームズ・ボンドとはまったく異なるスパイの物語であり、ジョン・ル・カレ原作の『寒い国から帰ってきたスパイ』とも、事実に基づいた話という点で異なる。 スパイというのはバレてはいけないから、実際には“知られざる話”というのは山ほどあるのだろう。この映画の物語は、専業スパイではなく、民間のビジネスマンがアルバイトで運び屋をやっていたので、公になったと言える。 主人公は、冷戦の犠牲者、歴史の証人、平和の貢献者と、いろいろな解釈ができるが、友情の物語として印象に残る。 体制が異なっても友情は成立する。そこに救いがある。
21/8/27(金)