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水先案内人のおすすめ

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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

Richter展

今や現代ドイツを代表するアーティストの1人となったゲルハルト・リヒター。2014年のクリスティーズのオークションで、現存作家史上最高額の落札価格(約36億円)ばかりが喧伝されるが、リヒター作品の魅力とは、「絵画とは何か?」「写真とは何か?」「〈見えるもの〉と〈見えないもの〉との関係とは?」「私たちは〈見えるもの〉にどのような〈意味を読み取るのか〉」という、絵画を巡る問いかけの連鎖によって構成されているのではなかろうか。 しかし彼は、それらのテーマについて、歴史的な根拠や彼の発想の契機を事細かには説明しない。そうする代わりに、多岐にわたる独創的な制作方法を通して、見る人の視覚に関与するリテラシーに挑んでくるのだ。モノクロームのスナップ写真や報道写真を精緻に描画し、そのイメージを刷毛を使ってボカす「フォト・ペインティング」、抽象表現的な油彩画を制作し、自ら撮影したプリントの上にさらに手を加える「オーバー・ペインティッド・フォト」などなど......。 日本国内でリヒター作品を所有する美術館はあるが常に展示されているわけではないし、新型コロナウイルス禍の現在、全長8mに及ぶ巨大なガラス作品を常設する愛媛県豊島の「ゲルハルト・リヒター THE TOYOSHIMA HOUSE」にも出向きにくい。 そのような状況下、1969年撮影の《Seascape I》(杉本博司の「海景シリーズ」を思い起こしてしまった)から2014年のアルミニウムにプリントした油彩の写真作品まで、小品ながらイメージの支持体となる素材と手法に関するリヒターのさまざまな試みを体験できる展覧会が開催されている。写真プリントや版画などが多いのだが、リヒターの手の動きを間近で実感できる1971年の油彩画《Inpainting(Grey)》に目を吸い寄せられるだろう。10月には、リヒターをモデルとする劇映画『ある画家の数奇な運命』も公開される。まずはリヒター作品に触れた上での映画鑑賞をお薦めしたい。

20/9/7(月)

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