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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

【閉幕】本城直季 (un)real utopia

2006年、初の写真集『small planet』で第32回木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家の本城直季。一見ミニチュアのように見えるが、実在する街の風景を高所から撮影していることで話題となった。その彼の初となる大規模な個展。20年を超える時の間に新たな意味が加わっていた。 デジタルカメラやドローンが普及し、全体にピントが合うことが当たり前な現在。ヘリコプターをチャーターしての撮影が多い本城の写真は、フィルムカメラである4×5の大判カメラでアオリと呼ばれる技法を使っているため、ピントの合っている部分とボケて曖昧な部分ができる。それは、瞬間的に部分部分にフォーカスしながら見る人間の眼に近い。ピントが合っている部分には、彼が上から覗き込んで気に止まったものが写っている。こんなに小さな人の営みが見えるのかと驚くが、「写真に写っていて気づいたのではなく、空から見えた」と言う。それは、世界の行く末を見守る、例えば映画『ベルリン・天使の詩』の眼差しのようじゃないか。 人は一度に全部を見ることはできない。デジタル技術には助けられるが、全能感は錯覚で、生身の人間は不器用だ。このコロナ禍でも、何かを見ていれば見えていない領域もある。 会場には、代表作『small planet』シリーズのほか、夜の街がつくりものみたいに見えて長時間露光で撮影した『LIGHT HOUSE』シリーズ、動物が地形をつくった風景を含む「kenya」シリーズなども展示。東日本大震災から3か月後、悩んだ末にヘリコプターから撮影した「tohoku311」は報道写真ともまた異なる貴重な記録だ。 また、市原湖畔美術館の藤原式揚水機(展望塔)に上って湖や庭を見下ろすと、本城の写真にも似た感覚が味わえて楽しい。

20/12/25(金)

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