かつて映画館は夢の空間だった――ということを思い出させてくれる。例えば半世紀前の東京では、超大作や、その年を代表する名作ならば、有楽座、アクション映画ならば、日比谷映画、女性映画ならば、日比谷スカラ座、一寸お洒落な文芸映画ならば、日比谷みゆき座、B級活劇ならば、丸の内東宝――という具合に作品の性格に合わせた贅沢で個性的な映画館が用意されていた。シネコン全盛の現在では考えられないような素敵な空間だった。そうした時代の夢の香りが、この映画には漂っている。 かつて淀川長冶氏が「世界一の映画館」と評した伝説の映画館が山形県酒田市にあった。噂には聞いていたが、その映画館グリーンハウスは、回転扉から劇場...

19/1/10(木)