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Tak

美術ブロガー

舟越 桂 私の中にある泉

都内では2008年の庭園美術館以来となる久々の『舟越桂展』が松濤美術館で始まりました。巡回展でなく松濤美術館独自の展覧会です。東京都美術館『木々との対話』や西村画廊で舟越氏の作品にしばしば会っている方も、『舟越 桂 私の中にある泉』は観に行く価値が多くあります。それは、グループ展でもなく新作展でもない、学生時代の作品から今年作られた最新作まで舟越氏のこれまでの「流れ」を鳥瞰できる貴重な機会だからです。 カトリック逗子教会のために制作した「逗子の聖母子」の試作(マケット)。舟越氏が聖像を手掛けていたのはごく初期のころのみ、また楠ではなく石膏像という点でも非常に珍しい作品です。舟越が25歳の時、函館のトラピスト修道院からの要請を受け、初めて楠を使い聖母子像を制作。父親である舟越保武はブロンズや大理石を得意としていたため、大学院生だった舟越桂氏に大役がまわって来たとのこと。この仕事がきっかけとなり、木彫で人物像を作るようになります。舟越作品から普遍的な人間そのものを感じるのは、45年以上の長きにわたり「人間の存在」を主題として作家自身が活動してきたからに他ならないと。このポイントを押さえておけば、1990年前後から、ポートレート的な作品から所謂「異形」的なものへ変遷を遂げていったこともすんなりと理解できます。 松濤美術館地下2階展示室は初期作品から「異形化」した作品まで年代順に、丁度いい塩梅の量でソーシャルディスタンスを取りながら並べられています。2004年以降制作され続けている「スフィンクス・シリーズ」は、一見、人物像から離れてしまったかのように思えますが、逆により人間らしさを表現しているのだと実感できます。第一展示室(地下2階)からの一連の流れ、つまり舟越氏の初期から現在までの作品の推移を捉えることの重要性を十二分に感じる構成です。舟越作品の全貌とその制作の裏にある大量のメモやデッサンそして家族への想いが詰まったものまで、バランスよく展示されている展覧会です。

20/12/23(水)

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