Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

バルーン 奇蹟の脱出飛行

新型コロナの感染防止策として国境封鎖に踏み切ったドイツのメルケル首相は、「移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって、こうした制限は絶対に必要な場合にのみ正当化される」と語った。メルケル氏は東ドイツ出身だ。 日本では「移動の自由」という概念自体がピンとこない。学校の歴史の授業で、「鎖国」とか「入り鉄砲に出女」という言葉を学んだが、はるか昔の話だ。しかしドイツでは30年前まで東西間の行き来はできず、ベルリンの壁を乗り越えようとした人は殺された。そんな時代の実話をもとにした映画だ。 ある家族が気球で国境を越えようとして失敗するところから始まる。秘密警察は国境を越えようとしている家族がいると知り、捜査を始める。ほんのかすかな手がかりからその一家に近づく。失敗した家族は、もう一度やってみようと、気球を作るための布を買い集める。追う者と追われる者とのサスペンス劇で、少年と少女のちょっとしたロマンスもあって、切ない。 シリアスなテーマの社会派映画でありながら、手に汗握るエンタメとして、見事。 見終わって、やはり考えてしまう。あの壁は何だったのか、と。数年前ドイツへ行ったとき、中学の先生が「最近の生徒は、親ですら壁の記憶がなくて、話が通じないんです」と言っていた。そういう世代のためにも、こういう映画は必要だ。

20/7/6(月)

アプリで読む