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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

一度も撃ってません

俳優歴65年を誇る石橋蓮司。彼のカッコよさとダメさぶりをバランスよく掬い取った異色作『一度も撃ってません』。 愛称〈蓮ちゃん〉が19年ぶりに78歳で主演、昼間は売れない作家兼主夫、夜はハードボイルド・スタイルでゴールデン街をさまよう“時代遅れ”の主人公を渋く、そしておかしみたっぷりに演じているのが最大の見どころだ。 その『一度も撃ってません』はこんなふうに生まれたと、阪本順治監督は語る。 「原田芳雄さんの家で蓮司さんの映画を作ろうと盛り上がった時、桃井さんや岸部さん、大楠さんがいて、佐藤浩市君や江口洋介君もいたんです。当然そこには当人の蓮司さんもいて、〈ふーん〉とか〈へぇー〉とか言っておりました。すべては蓮司さんのお陰です」。 出演陣の顔ぶれが凄い。〈漣ちゃん〉を頂点に桃井かおり、岸部一徳、大楠道代、佐藤浩市、豊川悦司、柄本明のベテラン勢、江口洋介、妻夫木聡、井上真央、柄本佑、寛一郎などの中堅・若手陣。そのバランスが絶妙だ。 オールド・ファンには郷愁を、若い世代には苦笑を誘う、日本映画としては珍しい、世代を超えて楽しめるハードボイルド・コメディになっている。まるで原田芳雄の霊がやどっているような映画だ。 市川進、御年74歳。彼は巷で噂の伝説のヒットマン……というのは、まったくの嘘で、その正体は理想のハードボイルドを極めるために試行錯誤する“一度も撃ったことがない”ただの売れない小説家だった、というお話。 三國連太郎、佐藤浩市、寛一郎と親子三代を演出したことになる阪本順治監督、昨年の『半世界』に続いての好調ぶりが嬉しい。 原案・脚本の丸山昇一の言葉。「いい歳をしてまだ馬鹿をやっている男女を描いていますが、かつて映画館の中では不良だった多くの大人たちにその遊び心を忘れないで欲しいという、そんな気持ちを込めて描いた作品なんです」。 老人も大人も青年も、浮世の憂さを吹き飛ばしてくれる本作を共に楽しもう。

20/6/30(火)

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