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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

狼をさがして

1974年に起きた〈三菱重工爆破事件〉は衝撃的だった。だが、その年の我が日記には『ゴッドファーザーPARTⅡ』『燃えよドラゴン』『仁義なき戦い・完結篇』がいかに素晴らしい映画かという記述が多く、その事件にはほとんど触れていない。不思議だ。 自分史的なその謎を解明することはもうできないが、本作『狼をさがして』を観て当時の状況が甦える。同年8月30日、東京・丸の内の三菱重工本社ビルで時限爆弾が爆発した。8名の死者と約380名の負傷者が出た。事件から1ヶ月後、犯人から声明文が出される。「東アジア反日武装戦線“狼”」と名乗る組織は、この爆破を「日帝の侵略企業・植民者に対する攻撃である」と宣言。その主張を頭で理解しながらも、連合赤軍事件などその種の事件に拒否感を抱いていた。それが無関心を装った理由なのかもしれない。 本作は、2000年代初頭、釜ヶ崎で日雇い労働者を撮影していた韓国のキム・ミレ監督が、ひとりの労働者から東アジア反日武装戦線の存在を聞いて興味をもち、出所したメンバーやその家族、彼らの支援者の証言を追ったドキュメンタリー。 昭和の事件に光を当てた貴重なドキュメンタリー映画だが、被害者の主張、メディア報道など事件の全体像を立体的に捉えきれていないのが、惜しまれる。

21/3/25(木)

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