評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています
佐々木 俊尚
1961年生まれ フリージャーナリスト
ひびきあうせかい RESONANCE
20/9/5(土)
K's cinema
日本の音楽ユニットLITTLE CREATURESのボーカル・ギターを務める青柳拓次さんが世界をめぐり、各地の音楽家たちと「サークルボイス」という不思議な音を紡ぎ出す。ゆるやかに押しては引く南の島のさざ波のように、映像が夢のように重ねられていく。観てると本当に気持ちいい。多幸感にあふれている。 サークルボイスとはいったい何なのか。それは作品では明確には説明されない。しかし聴いていると、直感的に理解できる。人類が言葉も文化も分かれ、バラバラになってしまう以前にあった原初の音楽とは、どんなものだったのか。21世紀のグローバルの時代だからこそ、青柳さんはその根源を再び探し求め、漂流しているように見える。行き着いたその先はまるで仏教音楽の声明(しょうみょう)のようでもある。言語が生まれて音楽ができたのではなく、言語より先にまず音楽があったという考古学の学説を思い出す。有史以前、地球はサークルボイスのような音に満ちあふれていたのかもしれない。
20/9/4(金)