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植草 信和
1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
追龍
20/7/24(金)
新宿武蔵野館
香港を舞台にした映画といえば、『慕情』『ラヴソング』『花様年華』『恋する惑星』などなど、たくさんの名作が浮かんでくる。 その香港返還が成って23年、様変わり著しいが、本作は1960年代のイギリス統治時代の香港が舞台。 汚職が蔓延している警察と黒社会の癒着が市民を恐怖に陥れていたその時代、実在した黒社会(香港マフィア)のボス、シックホーと香港警察のルイ・ロックをモデルにした実録犯罪ドラマだ。 1960年、中国・潮州から香港にやってきたホー(ドニー・イェン)たちは、やくざ同士の争いの助っ人に参加して警察に逮捕されるが、それを助けたのは香港警察のロック(アンディ・ラウ)だった。ホーは黒社会のボスに成り上がり、ロックは警察署長に登り詰める。ふたりは強い友情で結ばれていたが次第に綻びていく……という物語。 二大スターの共演、統治するイギリス人の横暴さなど見どころ満載だが、本作の最大のポイントは東洋のカスバといわれた九龍城砦の再現だ。 それがどんな場所だったかを説明するのは不可能だが、魔窟というに相応しい迷路や複雑な建物内で展開するアクション・シーンが素晴らしい。 監督は『ゴッド・ギャンブラー』シリーズなど香港のヒットメーカー、バリー・ウォンと本作では撮影監督としても名を連ねる『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』のジェイソン・クワン。そのコンビによる続編『追龍Ⅱ』の公開が待ち遠しい。
20/7/22(水)