Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

ノージャンル、ノーボーダー。個人的アンテナに引っかかるもの

佐藤 久理子

パリ在住、文化ジャーナリスト

読まれなかった小説

現代トルコ映画を代表するヌリ・ビルジュ・ジェイランの作品は、誰にでも気軽にお勧めできる性格のものでないことは承知している。 本作も189分という長尺の中、ギャンブル好きの父と小説家志望の息子の愛憎関係を文学的セリフの応酬で描き、正直字幕を追いながら観るのには体力を擁する。さらに登場人物が苦笑いしたくなるほど、まったく好感度がない。例えば小説家を目指す主人公シナンの他者に対するアグレッシブな態度は、神経に刺さる。 だがそれでも、“ある事実”が明かされるラストまで観ると、壮大なギリシア悲劇を目の辺りにしたような感慨に包まれ、運命、人生の選択といったものについて、深く考えさせられる。鬱屈を抱える人は、自分に共通するものをシナンの中に見出だすことも可能かもしれない。 トルコの自然を捉えた、いかにも映画らしい奥行きのある映像美とともに、別世界に誘われる。

19/11/25(月)

アプリで読む