Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

新春特番 新春時代劇傑作選2020

『河内山宗俊』1/4〜1/10 神保町シアター 「新春時代劇傑作選2020 生誕110年・山中貞雄 & 生誕210年・国定忠治」で上映 1938年に28歳という若さで戦病死した伝説の監督・山中貞雄の生誕110年と、 幾度も映画のモチーフにされてきた国定忠治の生誕210年を結びつけた企画の発想が、実にユニークで面白い。 今さら書くのも気が引けるが、『河内山宗俊』は河竹黙阿弥の歌舞伎狂言『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』の映画化作品で、山中貞雄の遺された貴重な三作品の中の一本。宝石のような映画だ。 個人的には山中作品から、伊丹万作作品と同様に映画の本当の面白さ、楽しさ、おかしさを教えてもらった。山中作品の基調であるユーモアとペーソスは、黒澤明や宮崎駿を経て、山下敦弘に流れていると思う。 本作の主人公はもちろん河内山宗俊(河原崎長十郎)。しかし、脇役のやくざの用心棒をしている金子市之亟という武士(中村翫右衛門)の方が人間として深みがあって、はるかに面白い。過去来歴を詳しく説明していないが、今は侍であることに愛想を尽かし無頼漢として生きている。 だが、親分に媚を売るわけでもなく、ショバ代集めの仕事もいい加減。お浪(原節子)の甘酒屋のショバ代を見逃す件など、実に微笑ましく自然に微苦笑が浮かんでしまう。 「それでいつ腹を切りますか」 「ここらがわしの潮時だ。人間、潮時に取り残されると、恥が多いと言うからな」 「人のために喜んで死ねるようなら、人間、一人前じゃないかな」 などなど書きとどめておきたい名セリフが多いのだが、音声が悪くてよく聞き取れない。 それが残念と思う方には、字幕付きのDVDをおススメしたい。そして『ルパン三世 カリオストロの城』のプロットと対比すれば、もっと映画の深さ、楽しみ方が広がるかもしれない。 『河内山宗俊』は何度観ても楽しい映画なのだ。

20/1/1(水)

アプリで読む