北朝鮮からの脱北女性がボクシングに挑戦する人間ドラマ。どん底の人間がボクシングと出会い、人生の再起をかけるというのは、お決まりのパターン。同系の作品では、安藤サクラ主演の百均のアルバイト店員がボクサーを目指す『百円の恋』の方が遥かに出来栄えがいい。 ただ、主演のイム・ソンミは魅力的だ。大ヒットドラマ『愛の不時着』の出演者という触れ込みだったが、出ていたかな、と思うくらい。よくよく調べてみると、北朝鮮で韓国コスメを売る行商役と聴き、なるほどと思った。思い返せば、印象的な役柄だが、その時の感じとは違って見えた。主演はデビュー14年目にして初。年齢も今年35歳と聞いて、驚いた。映画では20代前半のように若々しく、初々しくも見える。 本作では約1カ月半に渡るトレーニングを積み重ね、アスリートのような肉体を作り上げた。普段は感情を押し殺して、生きている女性が人知れず、感情を見せる場面がいい。ボクシングを通して、人間味を増し、成長する姿が心地よい。隆盛を極める韓国エンタメだが、イム・ソンミのような逸材がまだまだ眠っているのだろう。今後の彼女の活躍にも注目したい。

21/11/8(月)