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日本で(多分)一番多くの映画を観る(年間800本!=新作、旧作も入れると…)映画評論家
野村 正昭
映画評論家
スパイの妻〈劇場版〉
20/10/16(金)
新宿ピカデリー
誰がどう見ても、理不尽な状況に陥った時、彼や彼女たちは、どう対処し、行動するのか。 ホラーやSF、サスペンスなど様々なジャンルを跨いで、映画を撮り続ける黒沢清監督への私の興味は、その一点に尽きるが、思えば全ての映画は、そうした単純な原理で作られているといっても過言ではないが、それが、おざなりにされているからこそ、尚更貴重なものに見える。しかも、そのジャンルの約束事は常に徹底的に尊重されている。戦前が舞台の、この『スパイの妻』でも、ワンカットごとの美術と装飾の充実した仕事は圧倒的。 恐ろしい国家機密を世に知らしめるため、激動の時代に抗う夫への愛に生きる妻・聡子(蒼井優)が凛として美しく、画面の中で輝いているのは、黒澤映画の主人公たる資格を充たしているからだ。ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞、おめでとうございます!
20/10/14(水)