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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

ヴィヴィアン・マイヤー「Self portraits」

日本では2015年に公開された映画『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』を覚えているだろうか? この映画を監督したジョン・マルーフ自身がオークションハウスで膨大なフィルムの入った箱を入手し、撮影者のヴィヴィアン・マイヤーとは何者か、なぜ生涯写真を発表することがなかったのかを探っていくドキュメンタリーだ。 彼は、マイヤーが乳母の仕事で生計を立て、その合間に写真を撮っていた故人であることを突き止めた。彼女を知る人々のインタビューから、子どもを外の世界に連れ出すメアリー・ポピンズのような女性であったのが、中年以降は写真だけでなく新聞や服なども捨てられなくなり、他者とのコミュニケーションもうまくいかなくなったように描かれていた。 日本初公開となる今回の写真展では、1950年代初頭から78年の間に撮影されたセルフポートレート27点を展示。20代から50代までになろうか。ローライフレックスを手に鏡に映る入れ子の世界を表現した写真、スーパーマーケットのセーフティーミラーに映る自分と時計を一つの構図に収めた写真。なかには、クラーク・ゲーブルやマリリン・モンローなどの肖像写真の中に映り込んだお茶目な写真もある。マイヤーにとっては「写す」ことに興味があり、世界と話したり、断片を集めるような、密かに充足した時間だったのではないだろうか。 「人間」という謎にもとても興味があったのだろう。いきなり撮られて顔をしかめる人などの無遠慮なストリートスナップもいいので、机にある写真集もめくってほしい。

20/11/5(木)

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