十代から映画が好きだった人には、特に堪らない映画がやって来た。観客である私たちも高校時代に戻って、一緒に映画作りに参加させてもらっているような気分になる。最高の夏だ。そして心で叫ぶ。「映画が大好きだ！」と。 とある高校の映画部。部員一丸となり“どクサれ青春キラキラムービー”の撮影に取り組む中、独りハマらずにくすぶる女子高生「ハダシ」。本作は“十代の時代劇を作りたい”彼女がとびきりの映画愛を胸に、最高の寄せ集め集団たちと共に奮闘するひと夏を追ったSF青春ドラマだ。 ヒロイン「ハダシ」を演じた伊藤万理華が本当に素晴らしく、キラキラ輝いて眩しい。物語は恋に友情、青春にSFに時代劇そして芝居にと、一見欲張りとも思いがちな密度だが、決して不協和音を奏でることはない。数々のジャンルを鮮やかに横断して、最高のラストシーンへ。ここ最近で一番印象深く強烈なラストシーンだった。 ファスト映画問題が先日も世間を賑わせたばかりだが、映画の作り手たちが映画作りにかける時間の濃度と、観客がそれを堪能する時間濃度、ファスト映画では決して語ることの出来ない“映画体験”を本作は描いている。 かつての名作が今でも愛されているように、映画は時を超える。本作もきっと時を超えて、未来の映画好きたちに愛されるに違いない。この映画が大好きだ！

21/8/3(火)