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水先案内人のおすすめ

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平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

暁闇

「暁闇(ぎょうあん)」とは夜明けのほの明るい闇のこと。ネット音楽を通じて、集まった1人の少年と2人の少女の物語。音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB 2018」で準グランプリ、男優賞(青木柚)を受賞した。 監督の阿部はりか氏は東京芸術大学美術部先端芸術表現科出身。これまで演劇の脚本、演出、映画の美術、女優として活躍する今年24歳の新鋭。出演は『アイスと雨音』の青木柚、『明日にかける橋 1989年の想い出』で主人公の少女期を演じた越後はる香、「ミスiD・大森靖子賞」の中尾有伽。いずれも今後が期待される才能ばかり。 ネットで人気のアーティスト「LOWPOPLTD.」(ローポップリミテッド)にインスパイアされた作品で、デヴィッド・リンチ映画にも似た、けだるく漂白するサウンドが印象的。密かにひとりで音楽を作り、ネットに流す少年コウ。渋谷の街をふらつき、見ず知らずの男たちと関係を持つユウカ、諍いの絶えない両親にやるせない気持ちを抱えるサキ。それぞれに居場所を失った3人は、ネット音楽のジャケットを飾っていた謎めいた建造物の下に集う。 不思議な感覚に囚われる映画だ。3人はイヤホンの中でだけ音楽を共有するだけ。友情というよりも、なんとなく音楽や場所を共有し、なんとなく同じ気持ちを共有する。これがデジタル・ネイティブ世代の青春かもしれない。思春期にそれぞれ闇にぶつかった3人の心の揺れる様が繊細に描く。傑作『リリイ・シュシュのすべて』を思わせるところもあるので、岩井俊二監督作品が好きな人、悩みを抱える10、20代の若者に。 

19/7/17(水)

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