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水先案内人のおすすめ

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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

Inside/Out ─映像文化とLGBTQ+

日本でもそれなりの数、映画の中に同性の恋愛は描かれてきた。橋口亮輔監督の『ハッシュ!』のように筆者にとっても忘れられない秀作がある。しかしそれらは「点」であった。「点」を結んで「線」にし、「線」を重ねて「面」に記述し、ひとつの文化であると認めてゆく努力が、早世した評論家・石原郁子さんの仕事を除いて、映画の言論に少なかったことに気づく。 だから、早稲田のキャンパスの中でもとりわけ古風な建造物の中に、性的マイノリティ表象を含む映画やテレビドラマについての資料が展示されることは画期的な機会だろう。『惜春鳥』など巨匠木下惠介の作品に始まり、成人映画の内側に生まれた薔薇族映画、そして1980年代以降のインディーズ作家による表現、そして現代へ。資料群は周到に、かつ戦略的に配置されており、そうした意識の不在についてスマートに自覚を促してくれるが、その繊細な啓蒙性が心地よい。解説も、批判的なリーディングを静かな意志を込めて試みている。ただ「ブーム」になって、数多くのLGBT表象が描かれていればよいわけではない。商業化の「搾取」に陥らない「表現」のかたちも問われているのだ。 日活ロマンポルノにおける同性愛表象の貧しさ、LGBTの映像文化には「映画祭」という場が本質的であること、など言われてみれば納得ゆくことばかりだが、それを伝えるにはこういう具体的な空間を持つことが大切だ。この国では、やっとここまで来た、と言わねばなるまい。次の世代の映像表現を担う人、触れる人にも訪れてほしい。

20/12/19(土)

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