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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

藝大コレクション展 2020――藝大年代記

毎年恒例の藝大コレクション展。今年のテーマは「藝大の歴史」だ。第1部は「「日本美術」を創る」。まず出迎えてくれるのは、展示室1の黒田清輝「婦人像(厨房)」、高橋由一「鮭」、原田直次郎「靴屋の親父」。そこから「絵因果教」(天平時代)などの古画や「菩薩立像」(白鳳時代)、レンブラントの模写(黒田清輝)やミレーの模写(和田英作)を経て、1900年のパリ万博、上村松園「序の舞」、鏑木清方の「一葉」と続く。 工部美術学校に関連する素描類や彫刻家・平櫛田中収集の同時代の彫刻家作品、図案科の教官がパリ万博の際に購入したポスターなどもあり、さまざまな資料を通して東京美術学校の創設から20世紀中頃までの歴史をたどることができる。 展示室2は自画像と卒業制作作品で構成されている。自画像制作は1898年から始まり、戦中・戦後の中断期を経て現在まで続いている。いわば東京美術学校から東京藝術大学へと受け継がれた「伝統」と言えようか。青木繁、藤田嗣治、佐伯祐三......。なかでも目を引かれたのは、柳宗理(西洋画科卒)と勅使河原蒼風(日本画科→西洋画科)。そして、1984年の藝大での学生討論会でヨーゼフ・ボイスが使った黒板の展示に添えて、その頃に卒業した3名の「自画像」が。黒い紙かゴムシートを巻いただけの川俣正、木の板にデリケートな刻み目を入れて組み合わせた渡辺好明、そしてヴィデオパッケージの宮島達男。そう、自画像が「描くもの」ではなくなる時代がやってきたのだ。ここでも、自画像を通して時代の変遷を感じ取ることができるだろう。そして、戦前の中国や朝鮮からの留学生たちのその後の人生に思いを馳せたりも......。

20/10/6(火)

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