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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

【特別展】 竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス

新型コロナウィルス禍に加え、世界情勢の緊張感の高まりや人種差別問題への抵抗運動などなど、とかく気鬱に陥りがちの日々が続く。そんな折だからこそ、いつにも増してTwitterやFaceBookに投稿される微笑ましい動物たちの振る舞いや愛らしい写真に癒されている自分に気づく。動画や写真画像も良いけれど、「描かれた動物たち」もまた和みの供給源なのだ。 充実した近現代日本画のコレクションで知られる山種美術館の所蔵品によるこの展覧会、和みが必要なこの時期にうってつけの展覧会ではないだろうか。京都画壇を牽引した竹内栖鳳の緻密な観察と卓越した手技による動物画の魅力はつとに知られている。本展の第1章は細やかな眼差しが凝縮した代表作《斑猫》を含め栖鳳の動物画17点、第2章は栖鳳に師事した京都画壇の画家たちに加え横山大観や小林古径から現代の日本画家に至る東京画壇の作品39点で構成されている。 犬、猫、兎、木兎、鶴、馬や牛、鮎、蛙、蜘蛛......。小品が多いのだが1点1点見応えがあり、すっとぼけた蛙や木兎の表情に思わず笑いを誘われたりも。とはいえ、愛らしい動物たちにただただ和むだけではない。竹内栖鳳の《斑猫》や西山翆嶂の《狗子》を改めて間近で鑑賞すると、猫や子犬の毛の白い部分は絹本の地の白を残し、最小限の極細の墨の線と胡粉の白い線のみで毛並みが表現されていることに驚愕する。毛は「描かれている」のではなく、毛並みや毛の柔らかさが線によって「暗示」されているのだ。「描きこむ」西洋絵画とは異なる、日本画ならではの技術をつぶさに鑑賞できる絶好の機会となるだろう。屏風絵などの大作も出品されているが、間近で鑑賞できるサイズの作品だからこその醍醐味かと。

20/10/9(金)

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