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水先案内人のおすすめ

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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

存在のない子供たち

主人公に対して過保護な映画が嫌いだ。 日常を綴るにしても、過酷な状況下を見つめるにせよ、過保護な映画は案外多く、しかもそれが大方の支持を受けたりもする。 “可哀想”を“可哀想”に描くことにはどうやら、それなりのカタルシスがあるらしく、効率性を重視する作品は、それをやってしまう。 貧しい家に生まれ、出生届すら出してもらえなかった12歳の少年。彼は妹が強制結婚させられたことに耐えきれず、家出を敢行。映画は、そこから始まる彼の道行きを、ある意味“効率を無視して”追いかけていく。 精神的な“みなしご”が、これまで以上に完全に肉体が“みなしご”的危機に直面する旅。だが、作品が表出していくのは、辛さばかりではない。 ローティーンの心身に既に宿っている父性。己の無力を痛感しながらもどうにかそれを乗り越えようとする不屈の闘志。 試されることで、その人間の本質が明るみになる。こぼれ落ちた“それ”には、失敗や成功の次元を超えた固有の価値があるということ。 すっくと見つめるまなざしそのものが、本作ならではの詩情へと昇華している。だから、この少年はちっとも“可哀想”なんかじゃない。 誇り高く。肯定されている。

19/7/15(月)

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